■投げ銭方式をとり続けているエンターテイメント

 世の中のほとんどのエンターテイメントは投げ銭方式ではない。前例に挙げたストリートミュージシャンや、大道芸はエンターテイメントの原型であり、産業化に伴いその姿は前払いの定額方式となった。

 しかし、未だ投げ銭方式で成り立っているビジネスがある。ギャンブル業である。ギャンブルのほとんどは1ゲーム1ゲームへの投げ銭方式である。ただ大道芸のようにいいパフォーマンスへの後評価ではなく、刺激や喜びへの期待評価であるため前払いの投げ銭方式である。ファンクションの使用者の不快評価は「掛け金」として支払われ、快評価は「当たり金」として実際の数値としての評価が可能である。

 日本にはパチンコというギャンブルとゲームを融合した、エンターテイメント性の高いビジネスがある。世界のギャンブルビジネスがその射幸性を追求するうちにエンターテイメント性を失っていく中、残っているのは奇跡であり、それだけ優れたビジネスであると言える。

 図表1はパチンコの「掛け金」と「当たり金」の縦軸と、時間経過の横軸で示したグラフである。不快であれ、快であれファンクションの達成度であるため、その高さとそれに浸った時間で形成される三角形や台形の面積が感情のファンクション評価である。金額と時間を分単位で計算した総ファンクション評価は5,040,000という数字になる。

 図表2はカジノモデルによるファンクション評価。縦軸・横軸の金額と時間の概念は同じ。そして2例は同じ「軍資金3万円」と「最終的には勝ち負けなしの状態」も戻っている。パチンコとの違いは消費時間がパチンコは5時間に対して、カジノでは1時間の間の出来事である。なぜパチンコの消費時間が長いのかは、パチンコ特有の賭けレートの固定していることと、消費する金額は1時間当たり12,000円を越えないようになっているためである。このカジノモデルのファンクション評価は1,000,000であり、パチンコの5分の1になる。この5倍のファンクション評価の差が、パチンコのゲームとギャンブルを融合した故に生まれる強いエンターテイメント性の差である。

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